台湾の中国語と中国の中国語って何が違うの?
台湾華語?普通話ってなに?
中国語を学習したいけど、台湾と中国で言葉が違うならどちらを勉強すればいいの?
今回はこのような疑問に答えます。
- この記事を見てわかること
・台湾華語と中国語の違いがわかる
・具体的に何が違うのか明確になる
・自分がどの言語を学習すべきかわかる
台湾華語と普通話
台湾で標準語となっている中国語は「台湾華語」といいます。
一方で中国大陸で標準語となっている中国語は「普通話」と呼ばれています。
どちらも標準的な中国語の一形態なので、母語が台湾華語の方と母語が普通話の方で会話は成立します。
ただ一部の発音や文法の違いがあるのが二つの言語の違いです。
1.発音
2.異なる単語を使用
3.繁体字と簡体字
4.発音記号
5.文法の違い
台湾華語と中国語の普通話って何が違うの?
1.発音
台湾華語と中国の普通話の分かりやすい明確な違いは「発音」です。
●巻き舌音(舌尖後音)の違い
最も大きな違いの一つは巻き舌です。
中国本土では「zh, ch, sh」などの巻き舌音をはっきり発音しますが、台湾ではあまり舌を巻かず「z, c, s」音に近づける傾向があります。
・台湾華語:あまり巻かず「ズー・ダオ」に近い
・普通話:巻き舌で「ジー・ダオ」
●er音(児化音)の使用
2つ目の違いは児化音(アルかおん)です。
中国大陸では、名詞や方向詞の後に「儿(ér)」をつけて発音を変える「児化音(アルかおん)」がよく使われます。
しかし台湾ではほとんど使いません。
・台湾華語:這(裡/裏) zhè(lǐ)
・普通話:这儿 zhèr(「児化(アルか)」する)
●イントネーションの違い
台湾華語はゆっくり・丁寧な抑揚で語尾が上がりやすい柔らかい話し方です。
一方の中国大陸の普通話は、はっきり・平坦・スピード感のある発音が多いと言われます。
・台湾華語:やや柔らかく「ニー↑・ハオ↓」と語尾が滑らか
・普通話:はっきりと「ニィ・ハオ」
●軽声が少ない
中国語(普通話)における声調(トーン)の一種です。
中国語の多くの音節には「声調(1声~4声)」がありますが、一部の音節ははっきりした声調を持たず、軽く・短く発音されることがあります。
これが「軽声」です。
・台湾華語では軽声(けいせい)を使わず本来の声調で発音されるする
これは、台湾の発音習慣として文字の本来の声調を重視する傾向が強いためと言われています。
台湾華語で、軽声を無視して本来の声調で発音される代表的な単語を3つ紹介します。
台湾華語:「認識(rènshì)」と本来の声調で発音
普通話:「认识(rènshi)」と発音され、第二音節が軽声
台湾華語:「想法(xiǎngfǎ)」と本来の声調で発音
普通話:「想法(xiǎngfa)」と発音され、第二音節が軽声
台湾華語:「沒關係(méi guānxī)」と本来の声調で発音
普通話:「没关系(méi guānxi)」と発音され、第二音節が軽声
このように、台湾華語では軽声が少なく、単語の各音節が本来の声調で発音されることが一般的です。
軽声によって意味が区別されるような漢字でも正式な声調で発音される傾向があります。
●単語の違い
台湾華語と中国大陸の普通話では、同じ意味でも異なる単語が使われたり、発音が違うことがあります。
以下に代表的な例を5つ紹介します。
2.異なる単語を使用
なぜ台湾華語と普通話は異なる単語を使用するのか?
それには大きく分けて2つの理由があります。
2つ目のワケ:台湾語(閩南語)や客家語などの原住民の言語の影響
また、1949年以降の社会的分断によって、新技術や制度に関する語彙が別々に発展してきました。
これら歴史・文化・言語環境の違いが、台湾華語と中国大陸の普通話における語彙の差異を生み出したと言われています。
1.地下鉄
台湾華語:捷運(jié yùn)
普通話:地铁(dì tiě)
2.ゴミ:漢字は同じだが読み方が違う
台湾華語:垃圾(lè sè)
普通話:垃圾(lā jī)
3.週:同じ単語、読み方だが声調が違う
台湾華語:星期(xīngqí)xīng(第1声)+ qí(第2声)
普通話:星期(xīngqī)xīng(第1声)+ qī(第1声)
4、お弁当:日本語由来
台湾華語:便當(biàndāng)
普通話:盒饭(héfàn)
5、社長、店主:同じ読み方だが漢字が違う
台湾華語:老闆(lǎobǎn)
普通話:老板(lǎobǎn)
3.繁体字と簡体字
台湾華語では「繁体字」を使用します。
一方の普通語では「簡体字」を使います。
「歓迎(簡体字)」→「歡迎(繁体字)」
「豊(簡体字)」→「豐(繁体字)」
繁体字と簡体字はどちらも中国語の漢字です。
ただ文化的背景と使用地域に大きな違いがあり、台湾華語は繁体字を、普通語は簡体字を使用します。
繁体字は古代から続く伝統的な形を保ち、主に台湾や香港、マカオなどで使われ、書道や文学、文化遺産として重要視されています。
日本の旧字体と同様に画数が多く、学術文献や伝統文化、古典にも見られる複雑で重厚な字形が特徴です。
画数が多く書くのは大変ですが、日本の漢字にも多く共通点があるため、日本人学習者には読みやすく親しみやすいという声もあります。
一方、簡体字は1950年代に中国本土で識字率向上を目的に導入され、書きやすさや実用性が重視されており、主に中国本土やシンガポールなどで使用されています。
簡体字は画数を減らすために形が単純化されており、識字率向上に貢献しました。
簡体字は「覚えやすく、読みやすく、書きやすい」という実用性が際立っており、初学者や実用重視の学習者にとって非常に適していると言われています。
4.発音記号
台湾華語や普通話にも日本の五十音のような発音の基本表があります。
台湾華語では発音記号として「注音符号(ボポモフォ/ㄅㄆㄇㄈ)」を標準的に使用します。
普通話の発音記号として、「拼音(ピンイン)」を標準的に使用します。
| 拼音(ピンイン) | 注音符号(ボポモフォ/ㄅㄆㄇㄈ | ||
| 媽媽 | māma | ㄇㄚ ㄇㄚ˙ | |
| 東西 | dōngxi | ㄉㄨㄥ ㄒㄧ˙ |
台湾華語の注音符号(ボポモフォ)は日本人にとって馴染みがないので覚えるのが大変です。
一方で中国語の拼音(ピンイン)はローマ字表記なので、日本人が中国語を学習する時に使いやすく、
台湾の語学学校でも外国人にはローマ字表記が学習しやすいという理由から拼音(ピンイン)を使用することが多いです。
5.文法の違い
台湾華語と中国大陸の普通話は、発音や語彙の違いがよく知られています。
ですが文法(語順)にも顕著な差異があります。
これらは、台湾の歴史的背景や文化的影響、言語環境の違いによって形成されてきました。
以下に、台湾華語と普通話の文法における主な違いを具体例とともに紹介します。
1.補語の位置と使用法の違い
台湾華語では、動詞と介詞(前置詞)の位置関係が柔軟であり、動詞の後に介詞が続く構造が一般的です。
台湾華語では、動詞の後に補語が続く構造が一般的です。
例えば、「我吃得很飽(私はお腹いっぱい食べました)」のように、動詞「吃」の後に補語「得很飽」が続きます。
一方、中国大陸の普通話では、補語の位置や使用法に若干の違いが見られます。
2.動詞と介詞の位置関係
台湾華語では、動詞と介詞(前置詞)の位置関係が柔軟であり、動詞の後に介詞が続く構造が一般的です。

例えば、「我打電話給你(私はあなたに電話をかける)」のように、動詞「打電話」の後に介詞「給」が続きます。
一方、中国大陸の普通話では、動詞と介詞の位置関係がより厳密です。
介詞は動詞の前に置かれることが一般的であるため「我给你打电话」と表現します。
3.助動詞の使用頻度と位置
台湾華語では、未来を示す助動詞として「會」や「準備」などが多用されます。

例えば、「我會去(私は行くつもりです)」のように、「會」が動詞の前に置かれます。
一方、中国大陸の普通話では、未来を示す助動詞として「要」や「打算」などが多用されます。
まとめ
台湾華語と中国大陸の普通話は、同じ中国語の標準語でありながら、発音、語彙、文法、文字体系などに顕著な違いがあります。
これらの違いは、歴史的背景や文化的影響、社会的変遷などが複雑に絡み合って形成されてきました。
これらの違いを理解することは、台湾、中国文化や人々とのコミュニケーションを深める手助けとなります。
言語学習は、単なる言語学習にとどまらず、各国の歴史や社会、価値観を知るための窓口でもあります。
興味を持ち、学び続けることで、より豊かな理解と交流が広がることでしょう。
ちょっとの差でも現地の方の反応は全然違うので、ぜひ台湾華語や普通話を学ぶことをオススメします。



